資料(ツインズデータ)

双胎間輸血症候群を知っておこう

双胎間輸血症候群(Twins to Twins Transfusion Syndrome、以後TTTS) とは?

胎盤を通じて、一方の胎児からもう一人の胎児へと不均衡に血液が移行し、胎児にさまざまな影響を与える現象です。

どのような症状になったときTTTSを疑うのですか?

両児共に構造的な異常がなく、片児が羊水過多で他児が羊水過小を示す一絨毛膜性双胎をもってTTTSと診断するのが一般的です。なお、通常は両児に明らかな発育の差がみられます。ただし、TTTSとは現象ですので、特定の診断基準はありません。

すべての双胎妊娠に起こるのですか?

一絨毛膜性双胎の約5〜10%で起こります。
三つ子以上の場合でも、一絨毛膜性の妊娠が含まれれば、TTTSを起こす可能性はあります。

双子が育つお母さんのお腹の中は、図のような4つのケースが考えられます。このうち日本人の場合は、一絨毛膜二羊膜が、だいたい45〜50%、二絨毛膜二羊膜が50〜55%、一絨毛膜一羊膜は1%くらいです。TTTSは、二絨毛膜二羊膜では起こりません。二卵性双胎は、二絨毛膜 二羊膜ですから起こりません。
また、一卵性でも、受精卵が比較的早期に分割すると、二絨毛膜二羊膜となりますので、この場合も起こりません。

TTTSが起るのは、一卵性でも一絨毛膜二羊膜と一絨毛膜一羊膜の場合です。ですから、一絨毛膜性か二絨毛膜性であるかの判定はTTTSを早い段階で発見し判断する上で絶対必要な条件なのです。

「絨毛膜」とはどのような役割を果たすものですか?

胎児を包む膜を総称して卵膜といい、 母体由来の脱落膜と、胎児由来の絨毛膜、羊膜に分類されます。このうち絨毛膜はその一部胎盤を形成する 役割を担っています。おおざっぱに言って、一絨毛膜性とは胎盤が一つ、二絨毛膜性は胎盤が二つと考えればわかりやすいでしょう。

「一絨毛膜双胎」か「二絨毛膜双胎」かは、どのようにしてわかるのですか?

妊娠10週くらいまでであれば、超音波診断にて比較的容易にわかります。胎嚢という胎児を包む袋が二つあり、それぞれに胎児が見えるときが二絨毛膜性、 一つの胎嚢のなかに、二人の胎児が見えるときを、一絨毛膜性双胎と診断します。

なぜ「一絨毛膜双胎」にだけ起こるのでしょうか?

胎盤を通じて、血液が移行するのですから、TTTSはふたりが胎盤を共有する、胎盤が一つの場合の一絨毛膜性双胎にしかおこらないのです。

血管吻合とは?

一絨毛膜性胎盤の、両児の胎盤血管が交通している状態を血管吻合が有ると言います。この血管吻合には、胎盤の表面の血管の吻合と、深部の血管の吻合がありますが、 このうちTTTSを起こす重大な要素とされる血管吻合は、深部の 動脈ー静脈吻合といわれています。なお、胎盤の表面の吻合のほとんどは、動脈ー動脈吻合で、この吻合は、 深部の動脈ー静脈吻合の血流のアンバランスを補正する役割があり、実は大抵の一絨毛膜性胎盤でみられます。逆に、最近ではこの胎盤表面の 動脈ー静脈吻合がみられない場合にTTTSが起こりやすいともいわれています。

血管吻合はなぜ起こるのですか?

一絨毛膜性胎盤では、もとは一つの胎盤ですから、胎児間に羊膜があった としても、ほとんどの胎盤では、両児間を交通する血管吻合が形成されます。

血液の流れの不均衡で、胎児はどのようになるのですか。

双胎間輸血症候群が起きて、血液を多量に受け取ってしまう胎児を「受血児」といい、悪くなると多血症、高血圧、心機能不全、胎児水腫、羊水過多などを起こします。血液を出す胎児を「供血児」といい、悪くなると貧血、低血圧、循環障害、羊水過小などを起こします。

TTTSは妊娠中のどの時期に起きるのですか?

慢性TTTSは、胎盤、臍帯の構造的理由で、双胎間の血流がアンバランスになることにより、両児の尿産生に差ができ、急激な羊水過多と羊水過少を起こします。よっ て、その発症は、胎児の腎機能が確立する妊娠20週以降であれば、どの時期でも発症する可能性があります。また、一般的に発症時期が早期であればあるほど、経過が悪くなるという特徴があります。また、急性TTTSは、分娩直前または分娩中の子宮内圧の変化により起こるといわれています。

TTTSの予防法はあるのですか?

慢性TTTSは、胎児付属物の構造的異常が原因とされるため、妊娠初期の超音波の所見から予知が可能な場合があるとの報告はありますが、予防法はありません。一 絨毛膜性双胎の場合は、できるだけ早期にその予兆を発見し、適切な対応をとるしかないでしょう。また、急性TTTSも、予防はありませんが、供血児は貧血となり頻 脈となり、両児の心拍数に差がでてくるので、双胎心拍を同時に測定すると予測は可能です。

TTTSの治療の方法はあるのですか?

いくつかの治療が挙げられていますが、どれも根本的な治療ではありません。
慢性TTTSでは、症状を一時的に改善させることにより、胎児が子宮外で生存可能となる時期まで、妊娠週数をかせぐことが治療の主たる目的となります。

  1. 羊水穿刺除去法

    お腹から細い針をさして、羊水過多を改善することで、受血児においては、早産予防を、供血児においては外部からの臍帯圧迫を軽減するなどの効果があります。全体的にいえば胎児の環境を改善する期待がもて、手技的にも容易で最も一般的な方法です。

  2. 酸素投与法

    供血児の低酸素を改善する目的で行います。酸素は妊婦の鼻から投与します。

  3. 吻合血管レーザー焼灼術

    子宮を切開して胎児鏡を用い、レーザーで胎盤表面の吻合血管を凝固させる方法です。しかし、どこの施設でも可能というわけではないばかりか、母親の負担が大きく成功例も少ない。また最近では、あまり効果もないといわれています。

  4. 羊膜膜壁穿孔術

    羊水穿刺をするときに、意図的に隔壁に穴をあけ、ふたつの羊膜を交通させる手術。 胎児たちの羊水圧を均衡を平等にする目的で行います。手技的にはやや困難で、まだ一般的ではありませんが、最近注目されている方法でもあります。

  5. 管理入院

    多胎児妊娠中に胎児や妊婦の様態に問題が見られたとき、入院して経過をみます。病院にいることで、TTTSが悪化したとしても、素早い対応が可能です。

TTTSで生まれた子ども達の予後は?

発症する時期によって異なります。妊娠24週以前に起ってくる慢性TTTSの予後はかなり悪く、適切な治療で、どこまで在胎週数を延長できるかが鍵となります。一方、28週以降の発症の場合で、早期に発見できた場合は、新生児としても対応できるので、NICUのある施設では、予後もかなり期待できます。一方、急性TTTSは妊娠週数は問題とはならないことが多いので、供血児が貧血で輸血を必要となることはあるものの、一般に予後は良好です。

※TTTSは、まだわからないことが多い症状です。ここに書かれていることは、すべてあくまでも基礎知識です。詳細は担当医師にご相談ください。

(文責:ビネバル出版ツインズ編集部/無断引用・掲載を禁じます)


ふたご・みつごを母乳で育てたいと考えている人へ (前)

お話 堀内 勁先生

一般的に「母乳を与える」ということの大切な点として、栄養、免疫、そして母子の絆の三つがしばしば取り上げられます。まず母乳を知る上でこの三点の意味をお話ししたいと思います。

赤ちゃんの身体の成長に合った「栄養」

母乳育ちの固太り

母乳と人工栄養はどれくらいの差があるかということがしばしば論議されます。確かに「栄養素」ということだけで考えれば人工栄養でも母乳化が進み、母乳と比べて遜色はないと思います。しかし育ってゆく子ども達の身体構成を調べてみると、たとえば同じ体重の赤ちゃんを比べると「体脂肪」はミルクで育った子より母乳で育てられた子の方が少ないのです。人工栄養の子は脂肪が多いのです。

昔からよく「母乳育ちの固太り」と言いますね。母乳で育った子は、脳の重量が重い、心臓の重量が重い、筋肉が発達する、肝臓自体が重いなどの事実が知られています。脂肪で重いわけではないのです。母乳の子の肥満はないといわれるのは、そういう科学的な根拠があるからです。

人工乳では補えないもの

また、赤ちゃんは脂肪を消化吸収する酵素(膵臓からでるリパーゼと呼ばれるもの)が少ないので、脂肪を多く摂取すると下痢をします。母乳中に含まれる脂肪分の量はミルクでは補えないほど豊富なのに、なぜ赤ちゃんが下痢をしないのか。リパーゼが母乳中にあるからです。お母さんがあげた脂肪をお母さんがあげたリパーゼで消化吸収できるわけです。また、脂肪からは脳神経の伝達を促進する物質がたくさん作られます。その反応性が母乳育ちの子ども達はよくなるとされています。

このように母乳中には赤ちゃんの成長に欠かせない「消化管ホルモン」が含まれており、脂肪に関してだけでなく、腸の動きを良くしたり、吸収を高めるような働きをするものが15種類くらい含まれています。ホルモンですから、人工栄養には含まれません。たとえば母乳を与えているお母さんが「赤ちゃんがおっぱいをのみ出すとすぐお腹がゴロゴロしてウンチがでる」としばしば言います。これは消化管ホルモンの働きによるものなのです。さらにこのホルモンは授乳初期に限定して出るものなのです。

それから上皮成長因子というのもあります。これは赤ちゃんの腸そのものを育てるもので、腸を丈夫にします。また「栄養」といってよいかわかりませんが、母乳で育てるとお母さんの消化管の働きがよくなり、お母さんが口にするものが普段の食事と同じであっても腸の栄養吸収力が強まります。
冒頭に述べましたように、「栄養素」ということからみれば人工乳と変わらないかもしれませんが、その特性の一つ一つを考えてみると、「人工乳の母乳化」といっても人工乳では絶対まねのできないことがたくさんあるのです。

「免疫」とは命を受け伝えて守る仕組み

「免疫」というのは様々な意味があります。まず理解していただきたいのは、お母さん自身もいろんなバイ菌をもっていて、それでいながらなぜ健康でいられるのかということ。それは、そのバイ菌に対する免疫をお母さんが特異的にもっている、つまり「バイ菌とお母さんの免疫がバランスを保っている」ということなのです。

では赤ちゃんはどうでしょうか。赤ちゃんは妊娠中、お母さんのお腹の中で無菌的に過ごします。そして生まれてくると身体にバイ菌がどっと入ってきて、それが定着します。「母乳を飲む」ということは、お母さんの肌についているバイ菌をもらうということにもなります。そうするとそれまで「へその緒」を介してもらっていたお母さんからの「免疫」と「もらったバイ菌」とが一致するわけです。だから過剰にバイ菌が増えても、それを抑えることができます。また母乳の中にも、自分(赤ちゃん)のもっているバイ菌にたいする免疫が多くあります。母乳を飲んでバイ菌をもらい、しかも母乳でバイ菌を押さえる。これが大切なことなのです。

さらに、もし全く別のバイ菌が赤ちゃんの口につくと、お母さんの乳首の穴からそのバイ菌が入り込み、乳腺の周りにある免疫細胞がそのバイ菌に対して働いて、そのバイ菌に対する免疫を作ります。だから赤ちゃんがバイ菌感染しても、お母さんの免疫が働いてくれるのです。そういう相互の働きがあるのです。いろんな名前の免疫がありますが、そいうものではなくて、赤ちゃんとお母さんが「一緒になっておっぱいを飲む」という行為の中で、免疫が育つということなのです。授乳するとき乳首をきれいに消毒しているお母さんがいますね。今の話から言えば、それは間違いだということがわかります。拭いてはいけないんですね。

それはさらに「免疫の仕組みの中にも親と子のつながりが仕組まれている。だから母乳の子は病気しづらい」ということが言えます。例えばお母さんが風邪を引きますね。これはお母さんが過去に、その風邪に罹っていないということです。つまり赤ちゃんも罹っていない。当然赤ちゃんにもうつります。「赤ちゃんに風邪をうつすかも知れないから母乳をやめます」という人がいますが、それは間違いで、親子が一緒にいればミルクだろうと母乳だろうとうつるでしょう。まずお母さんの体の中に風邪に対する免疫ができてきて風邪が治る。そして免疫が母乳中にたくさん出るわけですから、赤ちゃんに風邪がうつったとしても、おっぱいを飲んでるとおかあさんの免疫で子どもの風邪が軽く済むんですね。それも「免疫」の仕組みの一つなのです。

「命を受け伝えて守る仕組み」というのは、お母さんの生理の中に組み込まれている。それが免疫なのです。「母乳には免疫があるよ」という、単純な、ひとくくり的なものではなくて、子どもと親にとって特異的なものが受け伝えられるという、そういう意味があるんですね。それぞれの親子がそれぞれの母乳授乳を介した特異的な関係があるんです。

この考え方は「健康な細菌叢(さいきんそう)」という言い方で説明されていて、お母さんと赤ちゃんがずっと一緒にいて、お母さんのバイ菌をうつすことは非常に大事なことなんです。それがたぶん「免疫」という意味では一番大事な点だと思います。

乳業会社の説明では「ラクトフェリン」という物質が、母乳中で免疫の働きをしているからとそれを取り出して添加していると言っていますけれども、もちろんそれも大事なんですが、それと同時にお母さん自身が特異的なバイ菌をもっているということ、そしてそのバランスを赤ちゃんが受け継ぐということに免疫の意味があるんですね。

病院の中で赤ちゃんだけお預かりしていると、赤ちゃんに病院の菌がうつります。ところがお母さんはその菌に対して免疫は持っていません。だから母乳をあげていても、問題がおきたりするのです。
ですから双子で産後一人が家に帰り一人が病院に残るということがしばしばありますが、できれば病院に親子ともども残っていた方がいい。私たちの病院で行っているような「カンガルーケア」(10p参照)では、お母さんが密接にくっつくわけですから、そこでバイ菌をうつしているわけです。あるいはカンガルーケア中にお母さんのおっぱいをのみますから、そうすると赤ちゃんがもっているバイ菌をお母さんにうつすことになります。そうするとおっぱいから免疫がでてくるんですね。
「私は母親だ」と感じることが何より大切

生まれ落ちたときの不安

赤ちゃんはお母さんのお腹の中でだいたい30〜32週になると、今まで自由に泳ぎ回っていたのに、自分の成長に伴って子宮の中が狭くなってきます。そうすると赤ちゃんにとっては、ギューッと子宮の壁で抱きしめられるような状態が何カ月か続くわけです。それで生まれてきます。だから抱きしめられるのが当たり前のように育ってきた赤ちゃんが、ぽーんと外の世界にでてきたということはどういうことなのかな、と考えてみましょう。

赤ちゃんの「胎動」はお母さんが感じるから胎動というのですが、赤ちゃんの方から言えばお腹の中で手を伸ばしたり、手を掻くように動かすことで羊水の圧を感じているはずです。そして大きくなってくると、手足を動かした時は必ず子宮壁に支えられているという感覚が赤ちゃんに定着してきます。
ところが生まれたばかりの赤ちゃんには、同じように手を動かしても支えてくれるものがないわけです。赤ちゃんにしてみれば、奈落の底に突き落とされような感覚を覚えます。それはどんな赤ちゃんも味わうんですよ。いままで守られてきた自分が守られなくなった。そして人間には生存本能というのがありますから「自分は生きてていけないんじゃないか」というような不安に、赤ちゃんはとらわれます。その時にお母さんが抱っこしてあげるわけです。

「守られている」という感覚

おっぱいをあげる格好は、子宮の中にいるようでしょう。だからおっぱいをもらう赤ちゃんは、「ああ自分はお腹の中と同じだ。守られているんだ」という感覚が蘇るんですね。それを何回も何回も繰り返していると、人のにおいや肌触り、ぬくもり、それからお母さんの抱くリズムなど、全部が赤ちゃんに伝わるわけです。それらが赤ちゃんの頭の中にトータルなものとして捉えられます。そこに自分を守ってくれる存在があるんだ、これは心の面から言うと「必ず守られている」という感覚が生まれるんですね。それがしっかりできると、子どもたちには少しずつ自立ができていくということになるんです。
当初、全然違う世界にきた赤ちゃんは不安の固まりです。それを「抱っこ」してあげることで、「大丈夫なんだよ」というメッセージを送ることになるんです。ですから赤ちゃんにはもともと「抱き癖」というのがついているんです。「抱き癖」がとれていくプロセスが育児なんですね。

「授乳」はコミュニケーション

授乳というのはお母さん自身がおっぱいを吸われます。吸われるということは、子どもを直接感じざるを得ないですよ。赤ちゃんらしいにおいが漂ったりもしますし。

お母さんたちの話を聞いているとしばしば、いま「ぐいぐいぐい」といかにも栄養を摂るように飲んでる。しばらくしたらそれこそすっーと寝てしまう。栄養のことを気にして「眠ってしまって飲んでくれない」といいますが、それはお母さんが安心感を与えてるんですね。食欲を忘れてまで赤ちゃんは無防備な顔で眠ってしまう。周りの人は「ほら、疲れたから飲めないのよ」と言いますが、そうではなくて赤ちゃんの顔をみれば、ほんとうに無防備な顔をして気持ち良さそうに眠っています。自分自身の命を母親という存在にすべて任せちゃったような顔で。身体から離して寝かせようとすると、起きてしまって困ったもんだ、といいますが、でももう一回飲ませるとまた寝てくれます。これは離されると不安、くっつくとお母さんを感じて安心という絆にほかなりません。

お母さんも「いまぐいぐい飲んでるわ」、「ちょぼちょぼの飲みになって来ちゃった」「これはだらだら飲みだからダメ」なんて言うのですが、それは栄養のことだけに目が行っているからですね。だらだら飲みの中で、「母親」を味わってますし、お母さんは「ちゅぱちゅぱっと飲んでるわ」と赤ちゃんを感じられるわけです。時にはお母さんが吸わそうと思うと飲まない子がいます。べろで乳首を転がして遊んでいる。そんなことをお母さん自身が感じている、それで良いのです。
この親子のやりとりこそが、人間が生物として生きていく上で一番大事なものである「生存本能」を満たしている、ということなのです。

ほ乳瓶での授乳はあげたときに飲ませることだけに集中しますから、お母さん自身も何? 飲んだかなどと言うことに気が行きます。つまり授乳を心から体感できないんですね。何?飲んだか、ということだけが意味のあることになってしまう。育児書をみると「この時期は何?飲む」などとしか書いてないですから、そちらばかり頭に行ってしまい自分自身の感じていることの意味を表現できないんです。

母乳育児を周囲が支える

赤ちゃんはお母さんとの体感のなかにお母さんとのつながりを感じます。お母さんもそうなのです。「それでいいんですよ」と周りの人間が言ってあげると、「ああ自分は母親になったんだ」という世界に浸れるんです。

赤ちゃんとお母さんの間には、言うなれば「おっぱい語」みたいなやりとりが生じるわけですね。そういうものが赤ちゃん達の心を育てる、そしてお母さんが母親になるプロセスを支えることになります。親としてたくさん触れあうことに意味があるんです。

出産したあとのお母さんの気持ちというのは、特に最初の1〜2カ月の間は、この子はどう育つのかしら、私は母親になれるのかしら、というようないろんな思いが生まれます。そのときとても重要なのは、「私は確かにこの子の母親だ」と感じることなのです。でもこれは周りが声をかけてあげないと非常にきつい世界です。親と子だけが感じる心の世界、あるいは自分単独の世界、言葉としては決して言ってくれない、赤ちゃんはいろんな表現はしているんだけれども、それでもお母さんにとっては孤独の世界です。

だから、お母さんの心をくみ取って「そうなんだよね」って言ってくれる人がいれば豊かなものになる。「ちょぼちょぼ何回もあげても無駄だよ。問題になるだけだよ。そんなものきっちまえよ」と言われたら、お母さんの心はそこで止まってしまうんです。そう言う意味でお母さんの心の世界は、周りで守らないいけないということなんですね。
だから授乳中のお母さんが集まって言葉を交わしたり、医師などから「お母さん、この子はいい飲み方してるね」なんて言われると嬉しそうな顔してやってますよ。

あるお母さんが電車の中で母乳授乳をしていると、年輩の男性が「公衆の面前でやることではない」とたしなめたそうです。これは、ちょっと違うという気がします。私は日本というのは、もともと公衆の面前で授乳することにもっとおおらかだったと思います。いまもそうだと思うのですが、でも「公衆の面前で授乳」というのは社会的に許されないのが現状です。子どもを育てる母親に敬意を表するのは、社会の基本なのだけれども、そういうことがないですね。日本の中では子どもはうるさい存在、子育てしている女性は「社会に役に立たない女性」だから、子どもをおいて外に出なさいと言います。しかしそんな中では安心しておっぱいをあげられないですよね。

精神の発達の過程をみても、ほんの初期は子どもの心はとても単純で、「本能」を満たされているかどうか、ということからの出発です。ですからそういう意味でその単純な要求に応えることが大事なのです。「守られていたい」ということ、「満腹でいたい」ということ、そのような単純で根元的な要求に応えていくことが、何より大切な時期だと言えるでしょう。そのうちに子どもの心は枝葉に分かれていって複雑になってきます。複雑になっても最初の根っこの部分は、自分自身がお母さんと良い関係ができたということを、感じとることですよね。

お母さん自身、わが子は私の胸の中でこんなに気持ち良くなってゆくんだ、という感覚。これはもう快楽の世界ですね。これを「心」といってよいかのかどうかわかりませんけれども、たぶん一番基本的な事だと思います。私たちが母乳を勧めている最大の理由はそこにあるのです。この子は私のおっぱいで育ったんだという体験が、ものすごい自信になると思います。「この子は私が妊娠して立派に産んだんだ」、「苦しみを乗り越えて産んだんだ」。それは女性としての達成感に繋がると思うのです。そしてそれは自分の中の母性についても、大きな達成感になると思います。

(ほりうち たけし)


ふたご・みつごを母乳で育てたいと考えている人へ(後) 堀内 勁先生 (ツインズ41号)

母乳育児は周囲のサポートしだい
妊娠中から、母乳を出すための準備を

妊娠6ヵ月くらいになると、母乳を出すための準備が整います。妊娠を持続させるホルモンがたくさん出て乳腺を育て、乳房は大きくなります。妊娠中に乳房が大きくなってきたら、母乳が出る準備は完了しているということになります。

ですから本来は特別な準備など必要ないのですが、しばしば「乳腺の詰まり」が理由でおっぱいが出ないことがあります。それをケアしておかなければなりません。乳腺はだいたい15〜20のかたまりからできていて、それぞれが乳首の先端にとても細い管になって開いていますが、ここが詰まってしまうのです。詰まっているものは初産の人の場合はほとんどがブラジャーによる糸くずです。その詰まりをとって、乳腺を「開通」させておくことがとても大切なのです。乳首の手入れをするということは、すなわち「詰まりをとる」ことです。私が勤務する病院では、「妊娠中は乳腺の発達を妨げないよう、しめつけないようにした方が良い」という理由から、妊娠中はブラジャーをしないようにお話ししています。

さて妊娠6ヵ月を過ぎると乳腺が完成し、わずかにおっぱいが滲んできます。これが初乳です。ほんのわずかに滲んでくる初乳を使って、乳首から乳輪の一番ふくらんでいるところ(乳管洞)をしごくように揉んで、おっぱいを絞り出します。ほおずきをもみほぐすように優しく丁寧に行うのがコツです。ただし揉んだことで、お腹が痛くなったりしたら止めてください。妊娠6ヵ月頃ですと、乳首を刺激したときなど子宮の収縮が起きることがあります。また多胎児は早産しやすいので、できたら36週過ぎてから始めるのが良いでしょう。

乳首の形には個人差があります。「陥没乳頭」の人は乳首を引っ張り出すケアをしましょう。助産婦などに習って、自分でマッサージします。「ブレストシェル」という器具もあります。プラスチックでできていて真ん中に穴があいていて、ちょっとブラジャーで圧迫すると乳首が出るというものです。これは何ヶ月からでも使えます。陥没乳頭の人はそういうふうにして乳首の準備をしておきます。

また一日に1時間ほど、乳房の日光浴ができると良いですね。窓越しの光でいいですから。それから乳房を石鹸などでごしごし洗わないように注意してください。乳首を保護している分泌物が落ちてしまい、かえって乳首を痛めてしまいます。

食事も特別なことは考えなくて良いのです。多胎妊娠の場合は妊娠中毒症になる確率が高いですから、そういうことに気を配るための食事制限はあるかもしれませんが、あれを食べてはいけないとかこれを食べなくてはいけないということはありません。

出産直後、赤ちゃんはおっぱいに吸い付く

陣痛が始まってきたら痛みと痛みの間隔が長いうちに、先に述べたような乳頭のマッサージをします。そして出産したら、直後に赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらいます。(帝王切開の場合は36週から乳頭の詰まりをとって準備します。やや遅れて出始めますので、赤ちゃんが泣くたびに連れてきてもらって授乳することが大切です。)

少し話が前後しますが、陣痛が強まってくると、「リラキシン」という赤ちゃんを産みやすくするホルモンの働きで、骨盤がゆるんだり産道が柔らかくなるというような母体の変化が起こります。それで乳首にある靱帯状のものも柔らかくなるのですが、これは出産後だいたい1時間くらいまでしか分泌されません。ですから3日も4日も吸わせずに放っておくと、乳房はドッジボールのように固くなって赤ちゃんがおっぱいを吸えなくなってしまうのです。

出産直後の1時間くらいのうちに赤ちゃんを胸に置くと(双子の場合は二人とも胸の上に置きます)、赤ちゃんはお母さんの乳房の方へ這って乳首に吸い付きます。吸い付くことを出産直後に覚えた赤ちゃんは、しばらく後に同じことをやってもまた同じ行動をします。最初にやらなければ、後になってその行動はできません。おっぱいに吸い付かせることで赤ちゃんに、「自分がこれから吸うおっぱいはこれだ」ということが刷り込まれるのです。

さらに出産後は、たとえ双子を産んだとしても、まず「出産したのだから疲れている」という意識を捨てることです。もちろん身体は疲れているんですよ。でも出産後の6〜12時間は、お母さんははっきり目覚めていて眠ろうとしても眠れないのです。その目覚めているときに赤ちゃんと一緒にいておっぱいを吸わせてあげるのです。このときは看護婦、助産婦、お父さんなどの介助を受けて下さい。

このように産後の1時間くらいから24時間は、母体にとっても赤ちゃんにとっても非常に大事な時間です。「お産が安全に済めばそれで終わり」と考えている産科施設が多いのですが、そうではありません。ですから母乳に対する考え方をよく理解している産科を選ぶことも、母乳で育てる上で大変重要です。(注)

3日間は練習。赤ちゃんは「水筒」と「お弁当」を持って生まれてくるのだから

赤ちゃんが生まれてから3日以内にとる母乳は、栄養的に言えばほとんど意味がありません。出産後、24時間に出る母乳の量は、1日目で10cc、2日目も20ccくらい、3日目も30〜40ccくらいです。そのためか、ミルクを与えている病院では「産後日数×10cc」などと方程式を出しています。生まれたばかりの赤ちゃんの胃袋はせいぜい6ccしか入りません。耐えず羊水を飲んでいましたから、貯めておく必要がなかったのです。そこへ10ccを飲ませるから吐くわけです。

最初の3日間はお母さんは練習のつもりで良いのです。量が少なくても心配はありません。なぜ大丈夫かというと、生まれたばかりの赤ちゃんを見ればわかりますが、むくんでいます。赤ちゃんの身体のお水の量を計算すると、赤ちゃんは3日間くらい一滴も水を飲まなくても大丈夫なようにできています。さらにヒトの赤ちゃんの特徴は、猿などと違って顔が丸い。猿の顔はしわくちゃです。丸いということは皮下脂肪がたくさん付いていて、栄養の蓄えがあるということです。計算すると、どんな子でも丸々3日間分の栄養はあるのです。双胎などで少し早く生まれる場合でも、早産児は満期産児より水分の蓄えは多いものです。

そう考えると、お母さんが出産後3日間はおっぱいが出なくても大丈夫なような「準備」が赤ちゃんにはできているということなのです。だから「赤ちゃんは水筒とお弁当を持って生まれてくる」と言われているのです。

そしてうまい具合に、3日ほどたつとおっぱいの出をおさえるホルモンがなくなり、おっぱいの量も徐々に増えて授乳もスムーズになっていきます。

双子の妊婦さんに「二人に飲ませるほどおっぱいが出るの?」とよく聞かれます。それにはプロラクチンのことを少しお話ししたいのですが、プロラクチンは吸われ始めてから5分くらいでぐんぐん脳下垂体から分泌され、10分吸われてやめたとしても30分くらいはたくさん出ていて、その後1時間半くらいするとスーッと下がるというようなリズムのあるホルモンです。おっぱいをたくさん出すには1時間半から2時間おきにおっぱいを吸ってもらうと、このホルモンが一日中出っぱなしになるのです。さらにプロラクチンは、おっぱいを同時に吸われると2倍出るようになります。だから同時に吸わせるということは大事なんですね。双子でも同時授乳が出来れば二人分の母乳が出て、母乳で育てられるのです

母乳育児は周囲のサポートが重要なポイント

お母さんの希望として「双子を母乳で育てたいので、このようにして下さい」と出産した医療機関にいうのは大切なことです。一所懸命やってくれるとこであれば良いのですが、すべての産科がそうではありません。ご自分の方から「自分は双胎妊娠なんだけれども、出産直後におっぱいを吸わせたい」旨を申し出て、サポートを積極的に依頼してみましょう。

家へ帰っても自分一人でやるのは大変。双子の赤ちゃんの場合、実家のお母さんが来たり、様々な支援の手が用意されることが多いと思いますので、そういう周りの方にも知識を持っていただいて、母乳が続けられるよう手伝ってもらうと良いでしょう。同時授乳に慣れれば、二人の赤ちゃんがいても授乳の時間は一回で済みます。

サポートの手が足りないと、どうしても「ミルク」の方が良いように思えてしまうこともあるでしょう。ミルクを売る会社は「ミルクは腹持ちがよい」と言います。母乳は赤ちゃんの胃袋からでていくのに1時間半です。母乳は非常に消化が良いのです。人工乳だと3時間です。これは逆に言えば消化が悪いということですね。「腹持ちがよい」といわれるとお母さんは良いことのように受け取りますけれども、「消化が悪い」といえば意味は違ってきます。

ミルクは牛乳から作りますが、牛の赤ちゃんは1日4回しかお乳を飲みません。本来草原に暮らしている動物ですから、あまり頻繁に飲ませていたら外敵に襲われます。ですから、腹持ちがよいようにできているのです。人間は猿の仲間です。木の上の生活で危険なのはお母さんの胸からすべり落ちることです。お母さんがいつも抱っこしていなくてはいけない。そのため消化が早いお乳が役に立つわけです。そういうわけで「赤ちゃんのお腹での消化時間が1時間半」と「プロラクチンの出が最高になってからなくなるまでの1時間半」とが一致している、そのような生物的な理由でも赤ちゃんのリズムとお母さんのリズムが一致しているのです。それに沿ってあげれば、おっぱいは出るのですね。

さらに、プロラクチンは昼間よりも夜間おっぱいを吸われるとよく出ます。実はヒトの赤ちゃんは産後2ヶ月間くらいは、夜型の生活リズムで過ごしています。お腹の中にいた時から夜型です。妊娠中、「夜になるとお腹の赤ちゃんがよく動く」という経験があるでしょう。また妊婦さんも妊娠の後半になると、夜眠っていてもしょっちゅう目が覚めるし、トイレも近くなります。それで、眠いから昼寝をします。このように妊婦さん自身が「時差ぼけ状態」になってるんですね。実際、体のリズムをつかさどる松果体ホルモンを調べてみると、明らかに妊婦さん達は時差ぼけ状態です。そして完全に回復するのに実は2ヵ月かかるのです。退院して家に戻ったら夜に眠るものだと考えられがちですが、産後というのは全く違います。実際に赤ちゃんを離しておいてお母さんたちを調べてみても、夜中に目が覚めるように身体のリズムができているのです。出産後も赤ちゃんが眠っているときに充分昼寝して、夜は赤ちゃんにつきあってあげるという心構えを作っておくことが大切です。

ですから周りの人は、そのようなお母さんと赤ちゃんの体調や生活リズムを充分理解し、配慮しなければなりません。一緒に住む家族は、赤ちゃんを産んだお母さんに対して「家事はしなくていいよ、自分のことは自分でするよ」という態勢になっていなければなりません。そうすると安心してお母さんも授乳ができるのです。産後に、赤ちゃんを育てながらご主人の世話もして家事もやるというのは、無理です。しかも母乳育児が確立するのに2ヶ月間はかかります。母乳育児は2ヶ月間周りで支えてあげるとその後は本当にスムーズにいきます。

逆に言うと、2ヶ月間はおっぱいをあきらめる必要は全くないということです。最初の2ヶ月間は少しうまくゆかなくてミルクをあげたとしても、もう一回やり直すことができます。そのためにはやはり周りが支えてあげる必要があります。病院によっては訪問してくれますし、電話で相談してもいいでしょう。2週間検診をやる病院も増えてます。私たちの病院でも産後2週間目には来院してもらい、授乳を含めた育児の悩みをお聞きすることができます。

母乳育児を支えていくためには、まず小児科医、助産婦、保健婦などの医療関係者の理解がもっとひろがらなければなりません。双子のお母さんはしばしば母乳育児ができなかったことを自分のせいにしています。でもそれは周りの支えがないからです。サポートがありさえすれば、たとえ双子でも、母乳育児は充分可能なのです。

(ほりうち たけし)

(注)ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)は、1989年に世界のすべての産科施設に対して「母乳育児を成功させるための10ヵ条」を守るように呼びかけました。そして1991年には、この10ヵ条(ツインズ40号参照)をすべて実施する産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院」に認定する制度も設けました。認定された施設は、外来窓口などで提示されています


多胎児の母乳育児をよりよくするもの

核家族社会の中の母乳育児

「ツインズ」40・41号と2回にわたって聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院の堀内勁先生に、「母乳」と授乳についての尾名無しをいただきました。

40号の第1回目の特集をしたあと、読者の皆さんから様々な感想や意見をいただきました。それを大まかにまとめると「双子を育てるのに、母乳はムリだ」「したくてもできなかった自分たちに育児を否定されたような気持ちになる」というものでした。今回この特集を組むにあたって、編集部でも現在の母乳育児をめぐる状況を見直してみました。

過日高松で開催された日本公衆衛生学会自由集会(ツインズ第40号45頁参照)で講演した香川医科大学小児科教授・大西鐘壽先生のお話では「本来、日本人は、赤ん坊を着物の中に入れて、素肌で温めたりいつもおんぶするなどして身体に密着させて子育てする民族」でした。それが近代化、特に第二次世界大戦後の高度経済成長と共に、アメリカナイズされた「母子分離による独立心の育成」の方向に、育児方法が大きく振られることになります。人工乳の充実(あるいは会社による巧妙な宣伝)や核家族化なども、母乳離れの大きな理由であると考えられます。

ユニセフとWHOの「母乳育児を成功させるための10ヵ条」が、共同声明として発表されたのは1989年のことです。その後10年余りが経過し、このとき採択された母乳への考え方や指導の方向性が医療関係者に浸透し、産科内の設備などもそれに伴って充実したのは、やっと最近のことといえるでしょう母乳の良さ、赤ちゃんに与える影響などが改めて見直され、「母乳で育てる」方向へ、大きく振り戻されているのだと感じます。同じ産科で出産しても、前回の出産とは医療関係者の考え方の違いで戸惑うママもいるかもしれません。

さて、双子育児と母乳の関係についてみてみますと、双子を母乳のみで育てることはやはりある程度条件が揃わなければ難しい側面は否めないと思われます。私たちは多胎児の母乳育児が成立する条件は次のようなことだと思っています。

  • ママが母乳育児をしたいと望み、それを実現すべく情報を集めるなど、積極的な気持ちを持つこと。
  • 医療関係者による、情報の提供を含む母乳育児への初期支援と退院後の支援。
  • 家族をはじめとして社会全体が、母乳育児の良さを理解し、ママが安心して授乳できる環境を整えること。

このような環境が整いにくい今の日本では、母乳育児ができなっかたとしても、それは決してママだけのせいではありませんし、育児そのものを否定されたということでも、もちろんありません。

ひとつのデータとして、このような条件が比較的そろった堀内先生が勤務されている聖マリアンナ横浜市西部病院では、双子の生後一ヶ月の時点での完全母乳率は60%だそうです(過去4年間)。

核家族の社会の中で、いつも一人で一度に二人(あるいはそれ以上)の赤ちゃんと、向き合い続けなければならないツインママも多いのが現実です。「一人の子どもを育てるには、村中の大人の力が必要だ」というのはアフリカのある部族のことわざだそうですが、それほど子どもを育てるということは、たくさんの人の目と手と心が必要なのですね。

さらに育児は「母と子の関係を実感して楽しむ」ことだと思います。「母乳を与えること」だけが母親の至上命令のようになり、育児を孤独に感じ、楽しさどころか苦しみになってしまうようなことがあってはならないでしょう。

社会的な価値として「授乳する時間を尊重する」という合意があれば、もっともっとサポートが充実していくのではないでしょうか。そして多くの家族が、「楽しい妊娠、出産、育児だった」と思えるよう、医療従事者、ひいては社会全体が「子育て」を支えなければならないと思うのです。

(編集部)